車検整備の内容と費用は?
現在、メルセデスの高年式モデルは値落ちが進んでおり、リーズナブルに購入できる状況になっているが、もっとも気になるのはトラブルや維持のことだろう。ここでは走行9万kmの先代Sクラスをサンプルに、車検整備の内容と今後の付き合い方について解説していきたい。
高年式モデルの気になる維持について話を聞いてきたのが、メルセデス・ベンツ専門修理工場「シーバース」。ここでは同工場に実際に入庫した走行9万kmの先代Sクラス(W221)をサンプルにしながら、メンテナンスの傾向を探っていきたい。W221に搭載されるV6/V8 DOHCエンジンはEクラスやCLSクラスなど多くのメルセデスに採用されている。それゆえにエンジン回りのメンテナンスはほぼ共通と考えていい。
では、早速サンプルカーの整備内容について解説していこう。エンジン回りではオイル漏れが多く、定番なのはオイルフィルターとオイルクーラーの間にあるガスケットの劣化。サンプルカーもオイル漏れを起こしており、今回ガスケットの交換を行っている。漏れたオイルがベルトまわりに付着すると新たなトラブルの原因になるので、早めに対処することが重要だ。オイル封入式のエンジンマウントは静かに、でも確実に劣化が進む部分で、左右に1つずつ装着されている。サンプルカーは走行9万㎞ということもあり、交換時期を迎えていた。同時にミッションマウントを交換するのがセオリーである。
足回りを見てみると、ボールジョイントが劣化しておりブーツ切れを起こしている。ここからグリースが漏れだしていると車検もクリアできない。走行距離が多い車はやはり足回りに疲れがたまりやすい。放置しておくとガタが発生し、異音や振動の原因になるのできっちりとメンテナンスしておく必要がある。
ブレーキ関係で指摘があったのが、ブレーキホース。経年劣化によりヒビなどが入るケースが多いので、定期的な点検が重要。エアコンコンプレッサーからも異音が出ており今回は様子を見ることになったが、注意しておく必要がある。
サンプルカーでは問題なかったが、W221では油圧サスのABC(アクティブ。ボディ・コントロール)やエアサスペンションのトラブルが多いが、エアサスペンションについては1つ前のSクラス(W220)のようにトラブルが頻発するということはない。耐久性は確実に向上しているようだ。
今回の車検整備では、法定点検とゴムパッキンやマウントなど基本的な消耗品のリフレッシュを中心に、エンジンオイル、ブレーキフルード、冷却水など油脂類の交換も行っている費用としては約20万円であった。
取材したシーバースでは、走行10万㎞以上の多走行車を対象としたキャンペーンを行っている。同社のこれまでの経験から走行8~10万㎞がメルセデス・ベンツのメンテナンスにおけるターニングポイントと考えており、このタイミングでどう手を入れていくかによって、その後のコンディションが大きく変わってくるとのこと。確かに高年式モデルは高度な電子制御を搭載するようになり、機械的な部分と電気的な部分の両面から見ていく必要がある。部品代や工賃の割引などクルマの状態によって内容が変わってくるので、詳細はシーバースまで問い合わせてほしい。
文:オンリーメルセデス